前半はサガの研究史、後半の今日はとくに「アイスランド人のサガ(家族サガ)」へのアプローチ方法について。
話の骨子は以下の著書に基づいている。
アイスランド語版 |
- Ólasson, Vésteinn. 1998. Dialogues with the Viking Age: Narration and Representation in the Sagas of the Icelanders, Reykjavík.
リレー講義のこの授業では、講師間で話がかぶることも、けっこうある。
研究史、とくにサガの起源論争などについてはほかの講師も触れることが多かったが、それにしても同じ経緯を語っているはずなのに、各自のバックグラウンドや世代の違いによって、強調するポイントや言及する研究者の名前に微妙な違いがあるのが興味深い。
ヴェーステイン(1939年生)の場合は、とりあえずドイツ語の使用率が多かった。そういう世代なのだろう。
ヴェーステイン・オーラソン版サガ研究史の「登場人物」を挙げると以下のようになる。
19世紀ロマン主義:ゲルマン文化 vs. 地中海文化
20世紀
- Ker, W.P. 1897. Epic and romance, essays on medieval literature, by W. P. Ker. London: Macmillan.
- Heusler, A. 1941. Die altgermanische Dichtung. Handbuch der Literaturwissenschaft. Potsdam: Athenaion.
- Liestøl, K. 1974. The origin of the Icelandic family sagas. Instituttet for sammenlignende kulturforskning. Serie A: Forelesninger ; 10. Westport, Conn.: Greenwood Press.
- Björn M. Ólason:アイスランド大学(1911創設)初代学長
- Finnur Jónsson
- Sigurður Nordal: Hrafnkatla (1940); Íslenzk menning (1942)
- Einar Ól. Sveinsson: Strulungaöld (1940)
- ヨーロッパ/キリスト教という背景: Bjarni Einarsson, Hermann Pálsson, Lars Lönnroth
- 構造主義的アプローチ:Th. Andersson
- Byock (1982/88)
- Meulengracht-Sørensen, Preben. 1980. Norrønt nid : forestillingen om den umandige mand i de islandske sagaer. Odense Universitetsforlag.
- --1983. The unmanly man: concepts of sexual defamation in early Northern society. Odense University Press.
- Miller 1983 et al.
「50年前に自分がアイスランド大学にいた頃はまだ、著者研究が支配的だった。」などの個人的述懐を交えての物語り。
今はもうさすがにその影は見あたらないが、アイスランド学派の影響は、やはり長い間相当のものだったようだ。
授業のさいごに、自分はもう10年以上大学で教えていないので、「エイルビュッギャ・サガ」のびっこのソーロールヴのようなものだと言っていた。
ソーロールヴはいわゆる退役ヴァイキングで、晩年は人付き合いも悪く諍いばかり起こし、周囲の顰蹙を買っていたが、亡くなってからしばらくして強力な悪霊となって舞い戻り、さらに手の付けられない状態になった。
ブランクを謙遜しての言葉らしい。
・追記
大分前にチェックして忘れていたが、大学のHPに、ヴェーステインが Gad Rausing 賞というものを受賞したときの記事がある。
ここの略歴によれば、コペンハーゲンやオスロやアイスランド大学で教えてきたが、1999年に教職は引いたようだ。
Vésteinn Ólason verðlaunaður fyrir framúrskarandi rannsóknir í hugvísindum | Háskóli Íslands
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