2010-10-21

fornleifar við Kolkuós

(c) Fornleifar við Kolkuós
コルクオース発掘調査
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Kolkuós (もしくは Kolbeinsárós; ós=河口)は、北部スカガフィヨルド東岸の中世期の港。
ホーラル司教座の北方16kmに位置し、いわば司教座の御用港として機能したようだ。
10月19日に、大学に隣接する国立博物館で、2003ー2014年の予定で進行中の発掘調査にかんする講演があったので行ってみた。

講演は、発掘責任者のラグンヘイズル・トロイスタドッティル(ホーラル大学所属)によっておこなわれた。
アイスランド語なので半分も聞き取れなかったが、パワーポイントと専門用語の多さに助けられ、なんとか部分的には理解できた。
調査の進行具合は、HPからも確認できる。HPにはかなり詳細な研究資料以外にも、夏のスカガフィヨルドの綺麗な写真が多いので、一見の価値はある。

コルクオースもほかの調査済みの港と同じく、サマー・キャンプの様態(定住ではなく一時的な滞在)を呈している。 もっとも印象に残ったのは、10世紀ー14世紀という活動時期の年代同定。
火山灰編年法(1104年のヘクラ火山の噴火以前)と、10世紀に由来する遺物が出土していることから(ただし大部分は11-12世紀に由来)、当地での活動を10世紀まで遡って認めることができるようだ。

これは、アイスランドの港の発掘例では珍しい。
ほとんどの例では、ヴァイキング時代まで遡る確実な証拠はでてきていない。

となりのエイヤフィヨルドのガーシル港は、文献史料中の言及が多く、もっと有名だが、現在までの発掘調査では14-15世紀の地層しか確認できていない。
» Harrison, Ramona, Howell M. Roberts, and W. Paul Adderley. 2008. Gásir in Eyjafjörđur: International Exchange and Local Economy in Medieval Iceland. Journal of the North Atlantic 1: 99-119. 


東端のガウタヴィークなども14世紀~16世紀の活動しか確認されていない。
» Capelle, Torsten. 2009. Rannsóknir á miðaldaverslunarstaðunum Gautavík. Ólafía: Rit Fornleifafræðingafélags Íslands 3. Reykjavík.

なので、ヴァイキング時代考古学の授業のレポートでアイスランドの交易港について調べたいと言ったところ、オッリ・ヴェーステインソンに、それは「ヴァイキング時代」考古学にならないから止めておけ、と言われてしまった。事例が少なすぎる、とも。

家族サガの中ではありふれた光景とはいえ、北大西洋を股に掛けた「活発な交易と交流」をヴァイキング時代のアイスランドに認めるためには、まだまだ証拠が足りないようだ。

とはいえ、コルクオースには、異教時代の墓地や木造家屋の可能性なども指摘されており、今後の調査進展が楽しみなことにかわりはない。
講演会では、聴衆が予想外に多かったことにも驚いた。
関係者(考古学者など)はもちろん、研究者ではない一般のお客さんも多かったように思う。

ちなみにグンナル・カールソンが最前列に座っていて、輸入品のひとつと想定されている愛玩用子犬の骨について質問していた。
ほかの犬の骨と一緒にまとまって見つかっていると聞いて、じゃあ犬小屋があったのかもしれないね、というようなことを言っていた。
アイスランド大学歴史学科からは定年退職(1939年生)したとはいえ、めぼしい研究会にはいつも顔を出しているし、相変わらず本も出している。これとか。

国立博物館では現在、2001-2005年の大規模な発掘調査の結果をもとにした特別展も開かれている。
Endurfundir (Þjóðminjasafn Íslands): 2010年1月31日〜11月30日

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