2009-10-09

bifröst, bekkurinn og netið


虹とクラスとインターネット
≫≫≫
今日は朝から嵐。
比喩ではなくリアルに飛ばされかけた。
でも嵐が去った後には虹が。

左下の赤い建物は国立兼大学図書館。
大きすぎて全体がフレームに入らなかっただけだが、ちょうど図書館からアースガルドに通じるビフロストに見えなくもない。

9月頭から始まった秋学期も半分が過ぎた。
来週は vinnuvika = work week という名の中休みで、一週間授業がない。
といっても山ほどの宿題と休み明けの中間テストがあるので、殆ど「休み」ではないが。

渡氷の遅れていたフランス人のクラスメイトが今日やっと到着したので、遅すぎる気もするが、クラスの紹介でもしようと思う。

私の所属するコース(MA in Medieval Icelandic Studies、略してMIS)は、2005年に外国人学生専用コースとして新たに設置されたもので、英語で授業を受けて英語でMA論文を書けば、1年〜1年半(論文の進度による)でMAが取得できるというもの。
アイスランド大学人文学部アイスランド語・比較文化学科とアールニ・マグヌースソン写本研究所との共催。
中世アイスランド学に関する学際的な基礎知識の提供を意図してるが、なかでも生徒各自が、実際にマニュスクリプトを自分で読んで解釈できるようにすることをコースの目標として掲げている。
公式HP

今年度の生徒は13人。出身地の内訳は以下の通り。
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アメリカ:2人(ひとりはロシア→アメリカ移民)
アルゼンチン(スペイン国籍所有):1人
カナダ:1人
ガリシア(本人は決してスペインとは言わない):1人
チェコ共和国:1人 
ドイツ:2人
フランス:4人
日本:1人
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このうちドイツの2人とフランスのうち2人はERASMUS等の交換留学生。
一からすべて自分でコーディネートしなければならなかった身としては、大学がサポートしてくれる交換留学制度を使うなら手続きも楽だろうと勝手に思っていたが、そうでもないらしい。
彼らは彼らで、現地に来てからも、自国大学に提出しなければならない課題やら公文書やらでとても忙しそうにしている。

ただ、ビザ(滞在許可)に関してはEEA(欧州経済領域)か否かで圧倒的な差がある。
南の方のヨーロッパよりも、よほどアイスランドと歴史的に関係が深いはずのカナダやアメリカも例外ではないらしい。
ちなみにアイスランドはEU未加盟。いまとなってはそれもどうなるか分からないが。
ビザに関してはもっと時間ができたら別枠でまとめたい。
言いたいことがたくさんあるし、(いるかどうかわからないが)後続のためにも!

…話がそれた。
クラスメイトの専門は、文学、言語学、文献学、哲学、神話学、そして歴史といろいろ。
13人以外にも、別のコースに所属しながらMISの授業を聴講している学生もいる。
当たり前かもしれないが、本国にスカンディナヴィア学の専門課程がないところからの参加者が多い(自分も含めて)。

大学に専門課程がないということは、関連資史料のそろった図書館が利用できないということを意味する。
アルゼンチンでMAまで取っているクラスメイトは、自分がアイスランド史の勉強を続けるために、いかに個人的に時間と手間とコストをかけなければならなかったかを力説していた。非常に共感できた。
そのような環境にあるため、彼は史料/二次文献を問わず、オンラインソースに非常に詳しい。

実際、古北欧語文献のオンライン化は、サガを中心にかなり進んでいる。
いろいろなサイトがあるが、Old Norse Texts Online がいまのところ一番体系的に情報をまとめていると思う。
テクストに比べ見落とされがちな二次文献については、圧倒的にここが使える(テクストもある)。
その他さまざまな北欧学関連リンク集としておすすめは、ケンブリッジのパトリシア・P・ボウリョーザのHP。

Googleブックス問題も記憶に新しく、お金や権利の問題をいいかげんにしてはいけないのも分かるが、それにしたって書物は読まれなければ意味がないんじゃないだろうか。


某大学書庫の革表紙の書物のように、大事に保管されながら100年以上も一度も開かれないまま朽ち果てていくよりは、ぼろぼろになって最後は古紙回収に出されても、誰かの記憶に何かを残す本の方が幸せじゃないかと思う。
(電子データは擦り減らないけど)

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