2009-09-19

"Út vil ek" 

今日、大学で面白そうな研究会があったので行ってみた。

„Út vil ek“—Frá skosku eyjunum til Íslands og annarra í norðri.

Ráðstefna um menningarleg tengsl milli skosku eyjanna og Norðurlanda frá miðöldum til dagsins í dag.
(中世から今日までのスコットランドの島々と北欧の文化的関係に関するカンファレンス)>プログラム

通常skoskur=Scottishだが、どちらかというとGaelicの意味で使われていた。
慣習、民間伝承、地名など、さまざまな要素の分析から、スカンディナヴィア(特にアイスランド)とケルト圏の島々(フェーロー諸島、シェトランド諸島、オークニー諸島、ヘブリディーズ諸島、マン島、スコットランド、アイルランド)とのつながりを浮き彫りにしようという試み。

"Út vil ek"「私は行く」は、『ホーコン・ホーコンソンのサガ』中のスノッリ・ストゥルルソンの台詞。
王の禁令にもかかわらず、ノルウェーからアイスランドへ向け出航しようとする場面。
アイスランドの「属国化」を企てるノルウェー王とそれに立ち向かうスノッリという、アイスランド・ナショナリズムの文脈では有名な台詞らしい。

余談だが、古アイスランド語テクストは、
 —koma út/fara út:アイスランドへ来る/行く
 —fara útan:海外へ行く
……という非常に紛らわしい表現を多用する。
サガを読み始めた頃はよく混乱した。なんでút=outなのに「来る」なんだ?
ソエガによれば "going out to Iceland from Norway"ってことらしい)
先日、『アイスランド人の書』を読む授業でこの表現が出てきて、ヴィーザルが違いを説明していた。
多くのクラスメイトの頭上に?が浮かんでいた。

カンファレンスに戻ろう。
特に質疑応答が白熱していたのは 、Þorvaldur Friðrikssonの "Mountains and Valleys in Iceland Carry Gaelic Place Names"。
アイスランドの地名の中にどれだけゲール語起源の要素が残っているかという発表内容自体よりも、途中で言及した、アイスランド全国民のDNA調査の結果によれば、女性植民者の63%は北欧系ではなくてケルト系だったという話の方が導火線となったようだ。
オーディエンスの内訳はよく分からなかったが、多分、アカデミックではない人たちも多数参加していたと思う。
かつてほどではないにせよ、やっぱりノルウェー・ヴァイキング起源かケルト起源かという問題は、大方のアイスランド人の心をざわつかせる話題らしい。

個人的にはギースリ・シグルズソンのサーモンの話が面白かった。
グラーガース、教会証書、ランドナーマボーク、サガの中の鮭漁への言及を比較して、ケルト圏からきた植民者の方が、スカンディナヴィア出身者よりも鮭漁について高い技術を持っていたという可能性を導き出していた。
ついでに、中世アイスランドの食糧事情の中でサーモンの持つ価値も。
ヴィンランドでは「大きな鮭=ワイン」らしい。

ギースリ・シグルズソンはアイスランドとケルト圏のつながりについての先駆者。
+Gísli Sigurðsson. Gaelic influence in Iceland, 2nd ed., with a new introduction, Reykjavík: University of Iceland Press, 2000. (1st ed.: Menningarsjóður, 1988)


そういえば昨日、コースの先生がインフルエンザにかかり、パーティが中止になった。
前日、思いきり授業でしゃべってたんだけど…来週ちゃんと授業あるかな?

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