2010-01-22

Handritin

"The manuscripts"
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>写真は今日の授業の手土産にもらった「フラテイヤルボーク」(Gks 1005 fol) の原寸大コピー。
 ただのコピーとはいえ超有名写本なのでテンションは上がるが、大きすぎて(フォリオ:二折判、A3くらい)どうやって保管すべきか模索中。


木曜10:00-13:10の「マニュスクリプト実習」"Handritavinna" (Working with manuscripts) は、間違いなく後期で一番エキサイティング、かつ「テクスト読解」とならんでMISの中核をなす授業。

講師はアールニ・マグヌースソン研究所のスヴァンヒルドゥル Svanhildur Óskarsdóttir とヨーハンネス Jóhannes Bjarni Sygtryggsson の二人。
スヴァンヒルドゥルが全体的な話をして、古書体学の部分をヨーハンネスが担当するようだ。
授業の前半は教室での講義だが、後半は研究所内に移動し、そこに保管されている実際のマニュスクリプトを使っての「実習」になる。

2回目の今日は、マニュスクリプトの制作作業についての講義だった。
材料になる動物(仔牛が多い)、皮紙制作に使われる道具、インク、羽ペン、顔料などの原料と作り方、執筆前の線引きや書き終わったあとの皮紙の綴じ方 etc..

特に強調されていたのは、大陸のマニュスクリプト制作とアイスランドのそれとの違い。
資源の乏しいアイスランドだが、できる限り現地で手に入るものが使われていたそうだ。
たとえば、毛の除去に使う石灰が手に入らないので、温泉水が使われていた可能性が高いとか(これはまだ証明されていない)。
アイスランドに自生する植物(ヤナギとコケモモの類)と凝固剤を混ぜたインクは光沢があり長持ちしたので、現在でもかなりはっきりと識別できる場合が多いとか。
とはいえ、さすがに彩色用の顔料は殆ど輸入品だったので、特に貴重だったようだ。

詳しくは以下。
≫ Soffía Guðný Guðmundsdóttir & Laufey Guðnadóttir, 'Book production in the Middle ages', in Gísli Sigurðsson and Vésteinn Ólason (eds.), The Manuscripts of Iceland, Reykjavík, 2004.

ちなみに初回は、アイスランドのマニュスクリプトとそれをめぐる状況の変化の概史だった。
講義の最後の余談だが、2008年秋にアイスランドが未曾有の経済危機に襲われた際、ある年配の女性はこう叫んだという(実際にはアイスランド語だったはず)。
"Oh my god!! But still, we have the manuscripts in Árni institute!"

スヴァンヒルドゥルによれば、1971年に最初のマニュスクリプトがデンマークからアイスランドに返還されて以来、人々の「マニュスクリプト熱」はどんどん冷めていったというが、それでも1940-50年代を知る人々は特に「アイスランドの誇り」を忘れてはいなかったという話。
(次回へ続く)

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