鶏が先か卵が先か:女性研究者採用について
アファーマティブ・アクションを導入したら逆差別が起こるのは必然では?
ブログの内容は女性研究者採用優遇政策に関する是非を問うもので、ブログ主さんの主旨は至極真っ当だと思う。
考えたのは、女性研究者がキャリアパスを描くことの難しさについて。
自分の経験からしても、修士課程まではまわりに結構女性もいたのに、博士に上がったとたん殆どいなくなってしまった。一研究者としてのキャリアパスは男性の先輩方を見ながら描くことができても、結婚・出産・育児などのライフプランを含めたキャリアパスを描くのに役立つ情報は得難かったし、誰かに相談した覚えもない。
それでも「勉強/研究」を一時的なものではなく生涯の仕事にするためには、業績を積み重ねて就職先を見つけるだけではなく(もちろんそれも大事だが)、自分の研究以外の生活とどうやって折り合いをつけるかも考えなければならない。
それは女性だけの問題でもないと思うが、女性の場合、出産のリミットが男性よりもシビアなのはまぎれもない事実なのだ。
そんなことを考え始めたのも、アイスランドは出産・子育ての開始年齢が全体的に早いので、子どもや同年代で子育て中の人々と接する機会が増えたからだろう。ここでは、子育てをしながら博論を書いたり、キャリアアップをめざすのも珍しくない。
そういう様子を見ていると、今は博論で忙しいから、なんて言い訳にすぎないように思える。この職業を続ける限り、研究で忙しくなくなることなんてあり得ないのだから。
アイスランドは女性首相だしアイスランド大学の学長も女性だし、女性の社会進出は日本と比べると格段に進んでいるイメージがある。
しかし、数値的にはどうなのだろう、と思って少し調べてみると、以下のような統計を見つけた。
>2008年のアイスランド大学の常勤研究者の人数。
(from Equal Rights Programme)
Assistant professor (Lektor) と Associate professor (Dósent) の待遇の差がどの程度なのかはよくわからないが、 全体としての男女比はそれほど差がなくても、やはり地位が上がると男性の方が多くなるようだ。
とはいえ、1970年代の「レッド・ソックス」運動以前は、アイスランドでも女性が外で働いたり大学に行くことは難しかったらしいので(女性運動と考古学界の関連についての発表で聞いた)、今後どんどん女性の教授が増えてゆくのかもしれないが。
ちなみに学生の場合は圧倒的に女性の方が多い。2011年2月の統計をみると、アイスランド大学の全校生徒14,212人のうち、男性5,003人:女性9,209人(1:1.84)。
日本の話に戻ると、男性であってもアカデミック・ポストへの就職が厳しいのは事実だし、「定職に就けない」ことへの心理的プレッシャーは女性よりも大きいのではないかと思う。
今の日本で「女性はいざとなれば結婚すればいい」というのは経済的にはもう通用しないとおもうが、心理的には、女性は就職しなくても結婚(+子育て)で「面目が立つ」という側面が、とくに田舎の方ではまだ根強い。日本では、女性の方が安定した職には就きにくいかもしれないが、その分フレキシブルな生き方はしやすいという利点があるかもしれない。それを「利点」と思うかどうかは人それぞれだとしても。
目の前に学会準備とか論文執筆とかが山積しているときほどこういうことを考えたくなる。明らかに現実逃避なのだが、結局、先が見えない不安の中で目の前のタスクに一心不乱に取り組むというのは、よほどの精神力がないと辛い。
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