2011-01-17

Helgi Þorláksson - Ísland og konungsvald

新学期の初めの一週間が終わった。
まだどの授業を取るか、決めかねている部分もあるが、今期はMIS以外の授業を多く取ることになりそうだ。
とくに、アイスランド語で教えられている授業にも出てみようと思っている。

そのひとつが、ヘルギ・ソルラクソンの「アイスランドと王権」という講義(シラバス)。
1100年〜1700年頃を対象に、アイスランド人と王権の関係、王権観の発展などを扱う、学部・大学院の共通講義。



初回のアイスランド語理解度は3割程度。
各単語やフレーズは大分聞き取れるようになったが、いかんせんそれを繋げて全体の意味を取るのがなかなか出来ない。
同じくアイスランド語で教えるといっても、生徒が言語学習者と意識して話してくれる語学の授業と、基本的にアイスランド人だけに向かって話す授業とでは、理解のしやすさが全然違うのもわかった。
とはいえ、テーマは自分の関心ど真ん中だし、毎回のトピックについて詳細なハンドアウトも配ってくれるようなので、なんとか出席し続けたいと思う。

授業の基礎文献として挙げられていたのは、以下のふたつの英語文献。どちらもノルウェー人による著作。
  • Orning, Hans Jacob. 2008. Unpredictability and Presence: Norwegian Kingship in the High Middle Ages. Leiden & Boston: Brill. (Uforutsigbarhet og Nærvær: En analyse av norske kongers maktutøvelse i høymiddelalderen. Oslo. 2004.)
  • Bagge, Sverre. 2010. From Viking Stronghold to Christian Kingdom: State Formation in Norway, c. 900-1350. Museum Tusculanum Press.

*英語とアイスランド語

もちろん、MISで修士号を取るためには、アイスランド語での授業に出る必要はない。
テーマにもよるが、修士論文執筆に際しても、必ずしも現代アイスランド語の研究文献を読む必要はないようだ(史料は別だが)。
それでもアイスランド語の授業に出ようと思ったのは、この2年間は、MISに歴史学・法制史系の授業がほとんどなかったからだ。
歴史学教授のヘルギ・ソルラクソンがコース・ディレクターだった頃はあったのだが、色々と事情があるのだろう。

運営委員会の先生方の話によれば、スタッフやコースの種類を増やしたいのはやまやまだが、予算が無いらしい。
大学全体では、生徒の少ないコース(フィンランド語など)が廃止されたりもしている。
MISへの入学希望者は年々増えているようだが、留学生の学費(学籍登録料)がアイスランド人学生と変わらない(しかも安い。年間3万円程度)アイスランド大学では、留学生を増やすことが直接大学の収入アップにつながるわけでもないので、むやみに生徒を増やすわけにもいかないのだろう。

英語で教えるMISの授業レベルが低いというわけではないが、やはり「お客様向け」というか、入門編の雰囲気が強い気がするし、学際性を追求するため、個々の分野の専門性は下がるという問題もある。
MIS出身者でアイスランド大学の博士課程へ進んだ人もいるし、専門的な個人研究へ入る前の準備コース、という位置付けなのだろう。

MIS以外でも、英語で教えている授業はいくつかある。
たとえば、考古学には英語での授業も多く、生徒にも講師にも外国人が多い。
アイスランドの考古学が、海外の強い影響下で発展してきた経緯を感じさせる。

それに比べて、歴史学には英語の授業がない。
サガという物語をメインの史料とするアイスランドの中世研究が、他所と比べて学際性が高いのは確かだ。
考古学でも歴史学でも、サガ・テクストと無関係ではいられないし、それを読み解くには文献学・文学の成果を吸収しなければならない。その逆も然り。
歴史学についても、スカンディナヴィアでは例外的に英語の汎用性が高い。
それでも、とくに、英語圏での注目度の低い中世後期以降(「自由国」の終焉以降)のアイスランド史を学ぼうとすると、やはりアイスランド語が主流になる。

日本で書くはずの博士論文のことを考えると、歴史学分野でも専門的な授業を受けておきたいし、サガ以外の史料も読む訓練をしたい。

というわけで、少なくとも今期は、ヘルギ・ソルラクソンと法学のマール・ヨーンソンの授業を受けてみる予定。

全然関係ないが、それにしても最近のアイスランドは寒すぎる。
図書館でも、窓際に座ると隙間風が寒くておちついて本を読んでいられない。
ムーミン谷のように、この国も冬は冬眠するべきなんじゃないだろうか。

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