2010-02-14

rúnir á hverjum degi

日常のなかのルーン文字
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2月12日(金)は「博物館の夜」というイベントがあった。
レイキャヴィークと周辺の町にある博物館・美術館が深夜12時まで開館し、それぞれ特色のあるイベントを開催する。
入場料も無料、各館をめぐる無料バスも運行されるという親切な企画。

大学キャンパスに隣接する国立博物館でも、ダンスや音楽イベントをやっていた。
ここはもう何度も来ているのだが、展示物の写真を撮っても良いことに初めて気づいた。

来るたびにおもしろい発見がある場所だが、今回特に気になったのはルーン文字の使われ方。
というのも、前日のパレオグラフィの授業で、アイスランドの写本では略字にルーン文字も使われるという話を聞いたからだ。

たとえば、以下のルーン文字 m は maðr の略字として使われる。

(cf. Abbreviations in Old Norse-Icelandic manuscripts)
たとえば GKS 1812 III 4to (c.1225-50) に実例(一行目の真ん中あたり)。


持ち物にルーンで名前を彫る例は博物館で見かけた気がしていたが、写本の略字にまで使われているとは知らなかった。

ここで冒頭の写真に戻る。
これは博物館所蔵の、羊毛から糸を紡ぐときに使われた紡錘のおもり。
南部アイスランドのHruni という場所で見つかった。
表面に 'Þóra á mig' (Þóra owns me)とルーンが刻まれている。
13世紀前半にHruniに住んでいたと「ストゥルルンガ・サガ」に言及される、主婦ソーラのことかもしれないとキャプションは仄めかしている。

次は12世紀にさかのぼるという鋤の刃。泥炭地で見つかったため保存状態が良い。
写真ではまったく見分けがつかないが、中央部分に 'boalliatmik inkialtr kærþig' と刻まれている。
意味は 'Páll lét mik (gera), Ingjaldr gerði (mik)' →'Páll had me (made), Ingjaldr made (me)' ...となるらしい。

ほかにも博物館には、教会の木造扉や木片に刻まれたルーンの例がある。
たしかに石や木に刻むには、直線で構成されるルーン文字はラテン・アルファベットより便利だったのだろう。

日本でルーンというと魔術関係のイメージが強いが、どちらかというと長い夜に暇をもてあました人々が、炉端で手近な持ち物に思い思いに文字を刻む姿が目に浮かぶ。

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